「365」Zedd/Ellis Remix:オリジナルの音楽世界を深化させ、印象を刷新するリミックス
「365」という曲はZeddの音とKaty Perryの歌声が交差して生まれました。音、メロディ、歌声は、どれを取っても素晴らしい。この曲をZedd自身がリミックスし、他のリミキサーによる作品を含めてRemixesとして配信しています。彼が自分の曲を自分でリミックスする機会は少ないため、「Zeddの音楽から受けた印象がZeddによって刷新される」という体験は実に貴重です。
近年のZeddは、あからさまにヘビーな音ではないのに、重みを感じさせるアレンジで曲を仕上げます。「The Middle」、「Happy Now」、「Lost In Japan -Remix-」などの曲を聴くと、畳みかけるような音の奔流を見せるEDMとは異なり、隙間を意識した音の構造を感じることができます。「365」のZedd Remixでも、ベースとキックの音を効かせながらも、空間を埋め過ぎないサウンド・アプローチを披露しています。音の輪郭が際立ち、じっくりと味わえるリミックスです。
「365」のオリジナルでは、Katy Perryの歌声をより美しく表現するアレンジに心地よく酔い、心を奪われました。彼女の歌声が「365」の柱であるということについては、それほど異論は出ないでしょう。
対して、Zedd Remixではボーカルを大胆に加工し、テンポを上げてオリジナルの影を断ち切っています。ボーカルを素材のひとつとして加工し、新たな音に合わせて再構築する。僕はボーカルにあまり手が加えられていないリミックスを好みますが、魅力的なサウンドであれば、ボーカルの加工もまたアレンジの一部として受け入れることができます。
Zeddの他に、Remixesのラインナップに名前を連ねるのがJonas Aden、Ellis、KUUROです(KUUROはZedd and Liam Payne「Get Low」もリミックスしました)。いずれも各自のエレクトロニック・サウンドを使い、それぞれの角度から「365」を再構築しています。この中で最も印象に残り、ピックアップしたいと思ったのがEllis Remixです。
Ellis Remixの特徴は、重ねたシンセサイザーの音が明るい印象を与える点と、ベースを強調した点です。ポップで大衆的な要素を重視しているという印象を受けました。オリジナルに漂っていたメランコリックな、あるいは気怠い空気は、Ellisの音が生み出す爽やかな風で薄れています。底抜けに明るい感じでもありませんが、足取りが軽くなる音かなと思います。