藍井エイル「IGNITE (THE FIRST TAKE)」:白い空間とマイクが切り取る点火の瞬間
無菌室を思わせる白い部屋の中でマイクとカメラが捉えた時間。やり直しのない一発勝負で音楽を披露する「THE FIRST TAKE」という企画に、藍井エイルが登場しました。これまでにLiSA、Little Glee Monster、北村匠海など、ジャンルも音楽スタイルも異なるアーティストが参加しています。その第49弾として名を連ねたのがエイルです。
エイルが歌った曲は「IGNITE」。彼女のライブには欠かせない代表曲です。いつもはエイルバンドとともに披露しますが、今回はピアノだけで歌います。音のシンプルさとTHE FIRST TAKEならではの緊張感が混ざり合って、聴き慣れている「IGNITE」の新たな一面が見えました。
「IGNITE」のようなアップ・テンポの曲を、シンプルなアレンジで聴くのは初めてでした。音の雰囲気が変わっても歌声の熱や勢いは変わりませんが、シンプルな音だからこそ本質的な部分が露わになって、いつもとは違う雰囲気を感じました。印象に残ったのが、時折見せる歌声の「鋭さ」です。歌声のエッジが際立ち、その鋭さが真っ白な空間に響きます。エイルの歌声の本質、その一端に触れられたのかもしれません。スリリングなパフォーマンスでありながら、魅力的な歌声によって緊張感が高揚感に変わります。
ピアノを弾いたのは、エイルバンドのバンマスを務める重永亮介です。普段は他の音と役割を分担していますが、THE FIRST TAKEでは、他の楽器の分まで「IGNITE」のアグレッシブさを表現しているように思えました。カメラのひとつが鍵盤にレンズを向けており、熱を帯びたテクニカルな演奏を視覚的にも堪能できます。歌声の鋭さを支えるピアノの鋭さを感じられるのではないでしょうか。