藍井エイル「I will…」:歌と音は移り変わり、混ざり合って、色が深みを増す
藍井エイルの新曲「I will…」が配信されています。2020年7月17日にミュージック・ビデオの一部が公開され、20日からはiTunes Storeなどでのダウンロードが可能になりました。この曲名は2020年5月に予定されていたツアーのタイトルに使われており、ライブでの核になったと思われる曲です。昨今の状況でツアーは延期そして中止となりましたが、こうして新しい曲を聴けるだけでも嬉しく、新しい音楽を届けてくれたことに感謝します。
「I will…」を聴いて、第一印象で心をつかまれたのがサビです。最初はピアノに乗せて切々と、優しく歌います。リズムやストリングスが加わると光が差し込むように明るくなり、サビに入ると気持ちがあふれるようにぐっと盛り上がる。するとサビの後半には温度がすっと下がるように歌い方が穏やかになります。サビで聴けるストリングスやリズム、歌メロは、とてもスリリングで、それでいて心地好い。
「I will…」を歌う藍井エイルの声は叙情的で、優しくて、そして力強い。彼女の美声を通して届くメロディもまた美しく思えます。そのメロディは歌声が呼び寄せたのか、あるいはメロディが歌声を求めたのか。歌声とメロディが鮮やかに調和します。曲を書いたのがTAMATE BOXとSakuだと知ったとき、メロディに魅せられた理由が分かりました。「螺旋世界」も「アカツキ」も好きな自分にとっては最高のタッグです。
起伏のある展開も「I will…」の魅力であり、特にフルレングスで聴くと、きっと強く印象に残ります。僕が好きなのが曲の後半で、音の厚みが増したかと思えば、ピアノだけになり、そして再び厚くなって盛り上がるところです。その様子はカラフルというよりは、いくつかの色を混ぜて深みのある色を作り出すイメージが浮かびます。表情を変える音のなか、スリリングな肌触りと穏やかな心地好さを通して、この素晴らしい曲をもっと好きになるのです。