藍井エイル「アトック」:暗闇でもがく言葉の群れは、傷を負いながらも歩みを続ける

fujiokashinya
Jul 23, 2021

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前作「鼓動」のリリースからひと月も経たずに、藍井エイルの新曲が配信されました。「アトック」という曲の特徴は、何といっても歌詞です。エイルの曲にしては珍しく、暗くて重い言葉で構成されています。呟くように歌う ♪自ら絶望を好んだ♪ という言葉が印象に残りました。

暗闇でもがき苦しみながら、しかし一筋の光を思い浮かべ、そこに向かって歩き続ける。「アトック」で綴られた言葉の群れは、暗く重いだけではなく、わずかな光を見せてくれます。ネガティブな言葉を多用しないエイルだからこそ、「アトック」の歌詞が際立ちます。いつまでもとけない万年雪のように、身体の内側に残り続ける言葉です。

「アトック」の音はポップさを感じるギター・ロックです。明るい歌詞であれば、爽快さや疾走感に満ちた曲になったのかもしれません。言葉から受ける印象が違うと、不思議と音の感じ方も変わります。音がポップだからこそ言葉の重さが印象付けられ、あるいは反対に、言葉の暗さが音の明るさを強調します。

エイルの音楽を聴いていると、ただ明るい、ただ暗いだけではない曲に出会えます。「アトック」もまたそのひとつ。相反する雰囲気の音と言葉がひとつの世界で共存しており、その深みを味わいながら聴きたい曲です。

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Written by fujiokashinya

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