焦田シューマイ・おみおみ・木場健介『ザコ姫さまは生きのびたい!~処刑の危機は、姫プレイで乗り切ります~』:転がる石のように翻弄される姫は、それでも自ら道を切り拓く
漫画『ザコ姫さまは生きのびたい!~処刑の危機は、姫プレイで乗り切ります~』(原作:焦田シューマイ、作画:おみおみ、構成:木場健介)の第三巻が発売されました。物語は入り組み、絡み合って進みます。核心に近づいたのか寄り道しているのか、転がる石を我々は追いかけます。
ゲームの世界に転生した主人公が攻略の知識をフル活用して生き抜く物語。孤独な皇女「セスリア」となった主人公が選んだのは、前世で縁遠かった姫プレイです。自らの処刑を避けるために邪神を斃そうと決意し、姫プレイと転生前の記憶でピンチを切り抜け突き進みます。兄の皇子「レグナス」、騎士の「ライネルト」、妹の「マリアンヌ」、マスコットが板についてきた使い魔「グイグイ」などキャラクターの思惑と行動が交錯し、セスリアは翻弄されながらも、しかしたくましく生きます。
第三巻で物語を動かす新キャラクターは聖女「ミラ」と従兄の「ユリシス」です。一方はセスリアを追い詰め、一方は救いの手を差し伸べます。新しい重要人物が現われたことで、物語はより深く、よりおもしろくなりました。味方に追われ敵に匿われるという何が真実か分からない状況で、持ち前の度胸と知識、機転と無謀さで自らの運命を拓くセスリア。
おみおみさんによる緻密で美しい絵を第三巻でも存分に味わえます。印刷物を買って、単行本用に描かれたカラーのイラストを目の当たりにすると、美しさが限界突破したとさえ思います。カバーの表はセスリア、レグナス、ユリシス、そしてグイグイ。裏表紙に当たる部分にはミラが大きく描かれます。……もはや美術館に展示すべき絵画なのでは?本文だけでも充分に伝わる緻密さは、デザイナーと協働したカバーでさらに強調され、美麗さをまといます。ため息の出る美しさです。額縁に入れて飾りたい。