くるり「STILL LOVE HER」:リスペクトを込めた原曲の解体、ギフトを添えた独自の再解釈
新たな生命とリスペクトを込め、40周年のCELEBRATIONで包んだギフト。TM NETWORKのカバー・ソング集『TM NETWORK TRIBUTE ALBUM -40th CELEBRATION-』に、くるりによる「STILL LOVE HER ~失われた風景~」のカバーが収録されました。
もともとファンであり、TM NETWORKの解像度が高いくるり。特に岸田繁のファン愛は有名です。今回の企画に際して、岸田繁は「TM NETWORKからはその進取性と、あらゆる辺境の音楽を取り込みミックスするプロダクション、人肌のソングライティング、豊かなハーモニーに随分と影響を受けた」と述べ、くるりの音楽性に与えた影響を振り返りました。
くるりはオルタナティブ・ロックバンドですが、TM NETWORKからはその進取性と、あらゆる辺境の音楽を取り込みミックスするプロダクション、人肌のソングライティング、豊かなハーモニーに随分と影響を受けたんだなぁ、と改めて思いながら、名曲『STILL LOVE HER(失われた風景)』のトラックを作り歌いました。
穏やかで優しい原曲の雰囲気を活かしながら独自に再解釈したサウンド。最初は体温低めで淡白な印象を受けるも、曲が進むにつれて徐々に身体が温かくなります。岸田さんによると音のテーマは、デビュー・アルバム『RAINBOW RAINBOW』を制作した頃のTM NETWORKならこの曲をどうアレンジするか、です。結果として生楽器が極端に少なく、軽めのエレクトロニック・サウンドを駆使したアレンジとなりました。バンドらしさを前面に出すのではという僕の予想は外れましたが、素敵な裏切りです。
元曲のアレンジ、録音が素晴らしすぎる(特に木根さんのハーモニカ)ので編曲には手こずりましたが、小室哲哉さんのシンセ・リフをマリンバに借り換えることで、もしも『RAINBOW RAINBOW』期のTMがこの曲を作ったとしたら、的なコンセプトが生まれました。
岸田繁
https://twitter.com/Kishida_Qrl/status/1790627863378776436
エンディングでは、これまた予想外の仕掛けが待っていました。「STILL LOVE HER」の音が続く、その裏で「THIS NIGHT」を歌っています。TM NETWORKの曲に通じているほどに驚き、嬉しく思えるギフトです。やがて「STILL LOVE HER」はフェード・アウトして「THIS NIGHT」だけが響き、そして静かに消えます。こうした遊びのある演出も好きです。